ラジオとおっさん
おっさんは車中でラジオを聞く。タブレットでYou Tubeを見始める以前はカーラジオがメインで、一時期は昼や夕方の帯番組を毎日聞くほどであった。今はradikoのタイムフリーでマイリスト登録した深夜帯のラジオを聞く事が多い。おっさんはラジオ好きなのである。
radikoの登場でどんな時間帯のラジオ番組でも1週間のあいだ、いつでもどこでも聞けるようになった。しかも無料で。本当に便利な世の中になったものだ。
このradikoによってラジオの聞きおこし文化は崩壊したし、ラジオ番組を録音する人々も絶滅した。聞こうと思えば、昔、頑張って眠い目こすって聞いていたオールナイトニッポンもすべて聞けるわけだ。さすがに時間的な問題ですべてを聞こうとは思わないが…。
例えるならドラクエ3で復活の呪文を入力せずによくなったくらいの衝撃がある。リセットボタンを押しながら電源を切る事でセーブ出来る。そのくらいのインパクトだ。
そんなセーブ機能がついた2023年現在のオススメラジオ番組を今回は紹介していきたい。少しでも気になった番組があればradikoのマイリスト登録をして1度聞いてみて欲しい!
東京ポッド許可局(TBSラジオ)
僕が毎週”密かな楽しみ”で聞いているのがこの東京ポッド許可局だ。
なんだろうか、この“密かな楽しみ”って言葉がよく合う番組なのだ。
マキタスポーツ・プチ鹿島・サンキュータツオの元オフィス北野所属のおっさん芸人達が毎回いろんな論をあーでもない、こーでもないと駄弁っている番組だ。
“十分どん兵衛”を世に広めたマキタスポーツの“食スケベ”ぶりや毎日各種新聞をくまなく読んでいるプチ鹿島の広い見識、言語学者でもあるサンキュータツオの寄席への愛。
オフビートな語り口で肩肘張らずに楽しめて、ラジオを聞いていてニヤニヤが止まらない感覚がある。
冒頭のいろんな“論”をテーマに話すクロストークはもちろんの事、“忘れえぬ人々”・”25歳だった”・”思わずツイートしてしまいました”の各コーナーも面白い。
番組全体、笑いだけを追い求める作りではなくて、人生の心理というか悲哀も含めての面白さを示してくれるので、おっさん世代にピンポイントに響く。
JUNK・伊集院光の深夜の馬鹿力(TBSラジオ)
朝の帯番組が終了して最近テレビに引っ張りだこの“ラジオの帝王”伊集院光の深夜ラジオ。こちらは思いっきり笑いに振り切っているラジオだ。
運転中に1人で笑っているおっさんがいたら、高確率でこの番組を聴いている、はず。
とくに“新・勝ち抜きカルタ合戦・改”のコーナーはおっさんの毎週の楽しみの1つ。リスナーの投稿のクオリティが高い。こういう所から放送作家や芸人が生まれるんだろうなって思わせる。
今回セレクトのラジオ番組の中でも、放送時間が2時間と長いのだが、フリートークもコーナーも面白すぎるので、時間があっと言う間に過ぎてしまう。また、伊集院のちょっと屈折した性格や話芸のスキルなどが聴けるとあって、テレビの伊集院しか知らない人ほどハマることだろう。
BEFORE DAWN (J-WAVE)
僕が好きな作家・燃え殻がナビゲートする深夜ラジオ。燃え殻の声がブランキージェットシティの浅井健一(ベンジー)にどことなく似ていて、とにかく良い声。深夜の時間帯にとても合うのだ。(実際にはタイムフリーで昼間に聴いているのだが)週に1回はこんな落ち着いた1時間があっても良いと思える番組。
何を隠そう、僕がブログで文章を書いてみようと思ったきっかけの1つは彼の『僕たちはみんな大人になれなかった』という小説だった。
乾いた文体とウィットに富んだ表現が共感を誘う。こんな文章が書けたら良いなぁって思ったのだ。そして何より彼の小説を読んで、これは自分の話だと感じた。
おそらく、そんな気持ちを持った人は僕以外にも沢山いて、少なからずこのラジオを聴いているのではないだろうか。
その証拠にリスナーの質問に答えるコーナーでは、どこかしら、クリエイター志望の人や日々の生活に詰まった感覚を持っている人が多い。
いわば同士の質問に、自分なりに真摯に答える燃え殻はその声も相まって、何処までも優しい。
そして、かかっている音楽も良い。このラジオを聴きながらサブスクのマイリスト登録した曲は多い。
的確に表すと、この番組は僕にとってBARで飲むジントニックみたいな存在だ。是非1回試して欲しい。
アルコ&ピースのDCガレージ
ラジオ番組に昔から定評のあるお笑いコンビ・アルコ&ピースの番組は、今回のセレクトから外せない。
どことなく、電気グルーヴのラジオを思い出させるような悪ふざけを毎回ハズレ無しで繰り広げるアルピーは、正直もっと評価されても良いと思う。
まぁ、このスタンスは彼らの芸能界での立ち位置から繰り出されるところもあるので、これ以上有名にならなくても良いか…。(本人達にはえらい迷惑な話だが)
平子の絶妙にウザく、そして的を得た人物描写や情景描写。酒井の一見”普通の人”のスタンスでの、平子いじり。本当に絶妙な2人のトークはハマる。
また、この番組のリスナーの投稿も、お笑い偏差値が高い。まったくTBSラジオの深夜枠は異常だ。番組をまたいでハガキ職人達が暗躍している。
好き嫌いは分かれるかもしれないが、この番組もイチオシだ。
ハライチのターン
ハライチのラジオはなんといっても岩井だろう。
TVでは当初、“じゃない方芸人”として認知されていたのだが、ここ最近の岩井の躍進は痛快で面白い。
ラジオでは特に岩井の毒っ気と妄想が顕著に表れている。そしてエッセイを書く文才も忘れてはならない。僕もエッセイ本を2冊とも購入・愛読している。妄想もツッコミも予想だにしない斜め上の方向から繰り出してくるので、思わず笑ってしまう。
澤部もTVより生き生きしている感じがする。彼の家族ネタは面白いし、ほのぼのしている。どことなく昔のTV番組・さま~ずさま~ずの三村のトークみたいで、おっさん世代の家族とのあるあると悲哀があふれている。
毒の岩井と可愛げの澤部。やっぱりこのコンビは好感がもてる。
番外編・オールナイトニッポン(オードリー・佐久間宣行)、JUNKの他の番組・空気階段の踊り場、そして夕方の帯番組
他のラジオ番組のオススメも多数ある。ニッポン放送のオールナイトニッポンではオードリーと佐久間宣行がオススメ。どちらも話題に事欠かないオバケ番組だ。今回のセレクトよりも、こちらの番組のほうが世間ではメインストリームなのかもしれない。
TBSラジオ・JUNKの他の番組も捨てがたい。バナナマン・おぎやはぎ・山里亮太。今回伊集院だけを紹介したが、もちろん他の番組も良いのだ。ここらへんとTOKYOFMの有吉弘行のサンドリを加えて、あとはお好みで。
空気階段の踊り場もおっさんオススメの番組だ。中2病男子のわちゃわちゃが毎週繰り広げられていて、各コーナーも面白い。おっさん世代はなにより”もぐら”に親近感が湧くことだろう。
最近めっきり聴かなくなってしまったが、夕方の帯番組もオススメ。TOKYOFMのスカイロケットカンパニーの熱さや、アフター6ジャンクションの映画批評は一聴の価値ありだ。
まとめ
中・高校時代にラジオを1番よく聞いていた。“電気グルーヴのオールナイトニッポン”や“伊集院光のOh!デカナイト”を夜中に勉強しながら聞いていた。今となっては勉強やってたんだか、やってなかったんだかよく分からないのだが。まぁ、おっさん世代のあるあるだ。
ラジオって聞いてた記憶は確かにあるのだが、内容まで事細かに覚えているってことは、ない。
刹那的な記憶はどこに逝くのか…。ただ聞いてたって記憶だけで十分なのだろうか。根が貧乏性なので考えてしまう。今聞いているラジオの記憶もいずれ消化されていくことだろう。
それでも、確かな事ばかりの世の中ではつまらない。だからおっさんはラジオを聞く。ラジオはたゆたう記憶の遊び場だ。ラジオが楽しかった日はリセットボタンを押しながら電源を切りたくなる。