或るおっさんと爆弾犬と戦争

 
SHING
今回は戦争についておっさんが思うことを書いてみました。センシティブな内容につき、不快な気持ちを持たれる方もいらっしゃるかもしれません。【閲覧注意】で宜しくお願いします。

爆弾犬の夢

爆弾犬の夢を見た。僕はリモート爆弾のスイッチを押す係で茂みの中に隠れている。古いニュース映像そのままに、だだっ広い荒野を勢いよく走り始めた大型犬は戦車の下に潜ると同時に、戦車は爆発して跡形もなくなった。僕がスイッチを押す描写は無かった…。

You Tubeの岡田斗司夫ゼミでも語られていたし、先日放送されたNHKの映像の世紀・バタフライエフェクトでも取り上げられていたので、頭にこびりついていたのか、久々の嫌な夢だった。

爆弾犬とは対戦車犬とも言って、第2次世界対戦時にドイツ対ソビエトの戦下でソビエト側が使った作戦だ。

夢とは違って、実際にはリモート爆弾ではなく、犬が背負わされた爆弾にはレバーが付いていて、戦車に潜った時にレバーが倒れて爆発する仕掛けになっていた。この作戦でドイツ側はおよそ300両の戦車を失った。

犬達は戦車の下に餌があるという成功体験の訓練を何度となく受け、調教されていく。

当時のスターリン政権下の軍隊には督戦隊(とくせんたい)が配備されていて、反逆・逃亡は銃殺刑、残された家族は強制収容所送りになる。上からの命令は絶対であった。例えそれが生命の尊厳に関わるような作戦であっても…。

300両もの戦車破壊の裏にはおそらくシミュレーションも含めて2倍3倍以上の犬が犠牲になっていたと思われる。

詳しくはこちら。

わんちゃんホンポ

みなさんは「対戦車犬(地雷犬)」という言葉を聞いたことはありますか?さまざまな悲劇を生んだ第二次世界大戦中にソ連軍によっ…

地続きの戦争

犬は理解していたのだろうか?自分が背負わされているのが爆弾で、戦車の下に入ったら死ぬことを…。

犬舎の仲間たちが次々減って行って、もう戻ってこないことを…。

餌が減らされ始めたら間もなく出動になることを…。

トレーナーの兵士が時折、涙を流していることを…。

おそらく理解していたのではないだろうか。犬の平均知能指数は人間の2〜3歳程度。なかでも軍用犬で扱われる大型犬は特に頭が良い。

戦争のリアルな部分、自分にとって身近な犬の悲劇を知って初めて本当に戦争を憎むことができる。本来、僕らと地続きにあるはずの戦争の恐怖なのに。

もちろん、ヒロシマ・ナガサキをはじめ、神風特攻隊ひめゆり学徒隊などの戦争についての悲しみの歴史は枚挙にいとまがないのだが、ここ最近の僕たちはどうだろう。それらを何処か遠くに追いやってしまっているのではないだろうか。

非人道的な兵器とはなんだろう

最近のウクライナ戦争のニュースでも終始報じられるのはクラスター爆弾がいかに恐ろしい兵器かや、プルゴジン氏の行方や、どちらが優勢かだ。

たしかに重要な情報だと思う。しかし、少し表層的で戦争の悲惨な現実から乖離している印象が強い。シミュレーションゲームのようなヘックス上の攻防戦。

戦争が始まってから1年半、戦争報道は日常化していき、どんどん麻痺していく。人の痛みや悲しみが付随していることをつい忘れがちになる。

絶えず戦争があるこの現代社会においては、無関心や忘却が本当の意味での非人道的兵器なのではないだろうかと、そう思ってしまう。

だから僕は、1日の中で数分・数秒だけでも、戦争を想像する。

それは例えば、旅客機が遠くを飛んでるのを見た時に。

スタンドでガソリンの匂いを嗅いだ時に。

高速道路で自衛隊の車両を見た時に。

不意に墓石を見た時に。

夜空に浮かぶ大きな花火を見た時に。

愛犬を散歩させている時に…。

僕はいろんなタイミングで戦争を想像し、そして平和を祈る。そんなことしかできないが、何も感じなくなるよりマシだと思う。少しでも同意してくれる人がいたら嬉しい。

1日でも早く戦争が終わることを願っている。

ご推測のとおり、我が家では犬を飼っている。2歳のイタリアングレーハウンドだ。散歩中、彼女は機嫌が良いと、ぴょこぴょこ跳ねるように歩く。その歩き方がたまらなく好きだ。

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